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太陽光発電システムを守る!パワーコンディショナーの熱対策完全ガイド

  • 執筆者の写真: 優 中野
    優 中野
  • 7月29日
  • 読了時間: 6分

はじめに:なぜパワコンの熱対策が重要なのか


太陽光発電システムの心臓部であるパワーコンディショナー(以下、パワコン)。このパワコンの性能が発電効率を大きく左右することをご存知でしょうか。特に夏場の高温時には、熱によるパワコンの出力制限や故障リスクが高まり、せっかくの太陽光発電の効率が低下してしまいます。実際、適切な熱対策を行わないと、最大で15%もの発電効率低下を招くケースもあります。

長期的な視点では、熱ストレスはパワコンの寿命を確実に縮めます。パワコンは太陽光発電システムの中で最も高価な部品の一つであり、通常10〜15年程度で交換が必要になりますが、適切な熱対策によってこの寿命を延ばすことができるのです。

今回は、発電効率を維持し、パワコンの寿命を延ばすための実践的な熱対策をご紹介します。



パワコンが熱を持つ仕組みと影響


パワコンは太陽電池から得られる直流電力を交流電力に変換する際に熱を発生させます。この変換効率は一般的に94〜98%程度で、残りの2〜6%が熱として放出されるのです。一見少ない割合に思えますが、例えば5.5kWのシステムでは、最大で330Wもの熱が発生する計算になります。これは小型ヒーターに匹敵する熱量です。

この熱が適切に放出されないと、パワコン内部の温度が上昇し続け、内部の電子部品(特に電解コンデンサー)に負担がかかります。電子部品は一般的に「10℃上昇するごとに寿命が半減する」という経験則があり、温度管理はパワコンの長寿命化に直結するのです。

また、パワコンには自己保護機能があり、内部温度が一定(通常60〜80℃)を超えると自動的に出力を制限します。これをサーマルシャットダウンといい、真夏の日中、最も発電できるはずの時間帯に発電量が低下する主な原因となっています。



最適な設置場所選びで熱問題を予防


熱対策の第一歩は適切な設置場所選びです。理想的なパワコン設置環境の条件は以下の通りです


  1. 直射日光を避ける場所:特に西日が当たる場所は、パワコン自体の発熱と外部からの熱が重なり最悪の環境となります。


  2. 風通しの良い場所:自然対流によって熱を逃がすため、上下左右に十分なスペース(少なくとも10cm以上、できれば20cm程度)を確保しましょう。


  3. 熱がこもりにくい場所:小さな押入れや密閉された物置などは避け、ある程度の空間容積がある場所が理想的です。


  4. 複数台設置時の間隔:複数のパワコンを設置する場合は、お互いの熱が影響しないよう、50cm以上の間隔を空けることをお勧めします。


既に設置済みの場合でも、周囲の障害物を取り除いたり、後述する対策を講じることで環境改善が可能です。



具体的な熱対策テクニック


1. 通気性改善対策

パワコン周囲の通気性を高めることは、最も基本的かつ効果的な熱対策です。


  • 周囲のスペース確保:パワコン周囲の物を整理し、熱がこもらないようにします。特に上部は熱が上昇するため30cm以上の空間を確保しましょう。

  • 換気扇の設置:設置場所が閉鎖的な場合、小型の換気扇を設置することで強制的に熱を排出できます。温度センサー付きのものを使えば、必要なときだけ自動で稼働させることが可能です。

  • 通気口の確保:パワコンを収納している場合は、下部に吸気口、上部に排気口を設けることで、煙突効果による自然対流を促進できます。


2. 日よけ・遮熱対策

直射日光からパワコンを守ることも重要な熱対策です。


  • 簡易日よけの設置:市販の日よけ用品やDIYで作成した日よけ板をパワコン上部に設置します。ただし、通気を妨げないよう注意しましょう。

  • 遮熱シートの活用:パワコン背面の壁に遮熱シートを貼ることで、壁からの輻射熱を軽減できます。特に西日が当たる壁面では効果的です。

  • 遮熱塗料の使用:パワコン設置スペースの壁や天井に遮熱塗料を塗ることで、室温上昇を抑制する効果があります。


3. 冷却システムの導入

より積極的な対策として、冷却システムの導入も検討できます。


  • 冷却ファンの追加設置:パワコン上部に小型ファンを設置し、熱気を強制的に排出する方法です。温度センサー付きのPC用ファンなどが流用できます。

  • 温度連動型換気システム:温度センサーと換気ファンを組み合わせ、一定温度以上になると自動的に換気を行うシステムです。市販品もありますが、DIYで構築することも可能です。



季節別の熱対策


夏季の対策強化

夏は最も熱対策が重要な季節です。以下の対策を講じましょう。


  • 早朝の換気:朝の涼しい時間帯に設置場所の換気を行い、室温を下げておきます。

  • 定期的な温度チェック:特に発電量が最大になる11時~15時の間は、定期的にパワコンの温度をチェックし、異常な高温になっていないか確認します。

  • 遮光カーテン・すだれの活用:パワコン設置場所の窓に遮光カーテンやすだれを設置し、室温上昇を防ぎます。


高温多湿地域の特別対策

湿度の高い地域では、熱問題に加えて結露の問題も発生します。以下の対策が有効です。


  • 除湿器の活用:高湿度環境では除湿器を設置し、湿度を60%以下に保つことが理想的です。

  • 通気性と防水性のバランス:屋外設置型の場合、通気口には防水フィルターを設置し、雨水の侵入を防ぎながら換気ができるようにします。



メンテナンスによる熱対策

定期的なメンテナンスも熱対策として重要です。


  • 冷却フィンの清掃:パワコンの冷却フィンにホコリが溜まると放熱効率が低下します。年に2回程度、エアダスターなどを使って清掃しましょう。

  • 温度モニタリング:非接触型温度計で定期的にパワコン表面温度を測定し、記録しておくことで、異常な温度上昇を早期に発見できます。

  • 異常音のチェック:冷却ファンが内蔵されているタイプのパワコンでは、ファンの異音や停止が熱問題に直結します。定期的に動作音を確認しましょう。



まとめ:コストパフォーマンスの高い熱対策を選ぶ


パワコンの熱対策は、発電効率の維持と機器寿命の延長につながる重要な投資です。ただし、すべての対策を実施する必要はなく、設置環境や気候条件に合わせて効果的な対策を選択することが大切です。

最も費用対効果が高いのは「適切な設置場所の確保」と「定期的な清掃・点検」です。これだけでも相当の効果が期待できます。その上で、特に熱問題が懸念される環境では、換気システムや遮熱対策を追加していくことをお勧めします。

パワコンは太陽光発電システムの中で最も故障率が高い部品です。適切な熱対策を行うことで、システム全体の安定性と長期的な収益性を高めることができます。ぜひこの記事を参考に、お使いのパワコンに最適な熱対策を実践してみてください。


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