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太陽光発電の発電量低下を引き起こす「クラスタ故障パネル」とは?

  • 執筆者の写真: 優 中野
    優 中野
  • 2月16日
  • 読了時間: 4分

更新日:4月15日

太陽光発電システムの長期的な運用において、発電量の低下は避けられない課題の一つです。

その要因の一つに「クラスタ故障」があり、適切な診断と対策が求められます。

この記事では、クラスタ故障のメカニズム、影響、検出方法、対策について解説します。


1. クラスタ故障とは?


(1) クラスタの構造と役割


太陽光パネルは「セル(太陽電池)」と呼ばれる発電単位が直列・並列に接続された構造を持っています。

一般的な60セル(または72セル)構成のパネルでは、セルが20セルずつ3つのクラスタに分かれ、それぞれが独立して発電を行います。


各クラスタにはバイパスダイオードが並列に接続されており、異常が発生した際に電流のバイパス経路として機能します。

しかし、クラスタが完全に故障すると、その部分が電流の経路として機能しなくなり、パネル全体の発電量に悪影響を及ぼします。


2. クラスタ故障の主な原因


(1) マイクロクラック(微細亀裂)

• セル表面のシリコン層に微細なクラックが発生すると、その部分の電流経路が遮断され、クラスタの出力低下を招く。

• クラックの発生要因は、温度変化による熱応力、輸送時の衝撃、設置時の圧力など。


(2) はんだ接続不良

• 太陽電池セルとバスバーの接続部ではんだのクラックや剥離が発生すると、電気抵抗が増加し、最悪の場合クラスタ全体が発電しなくなる。

• これは、製造時の接合不良や長期使用による熱膨張・収縮の繰り返しが原因となる。


(3) ホットスポット現象

• パネル表面の局所的な汚れや影(部分遮蔽)が原因でセル内部の抵抗が増大し、発熱が起こる現象。

• 発熱が進行するとセルの劣化が加速し、クラスタ故障を引き起こす可能性がある。


(4) PID(Potential Induced Degradation:電位誘導劣化)

• 高電圧環境下でパネル内部の電荷がセルのPN接合に影響を与え、発電効率が低下する現象。

• 特に負極側のパネルに発生しやすく、長期間にわたって徐々に進行する。


3. クラスタ故障が発電量に与える影響


(1) 局所的な出力低下


1つのクラスタが完全に故障すると、パネル全体の発電量が約1/3(60セルパネルの場合)低下する。


(2) システム全体の発電量減少


ストリング(直列接続されたパネル群)の中にクラスタ故障が発生したパネルが複数枚あると、ストリング全体の電流が低下し、システム全体の発電効率が低下する。


(3) バイパスダイオードへの影響


クラスタ故障が発生すると、バイパスダイオードが動作するが、長期間にわたるとダイオード自体が劣化し、さらなる発電低下の要因となる。


4. クラスタ故障の検出方法


(1) IVカーブ測定

• パネルの電流-電圧特性(IV特性)を測定することで、異常な電流低下があるかを確認できる。

• クラスタ故障が発生すると、特定の電圧領域で電流の急激な低下が見られる。


(2) サーモグラフィー診断

• 赤外線カメラを用いてパネル表面の温度分布を測定し、異常発熱(ホットスポット)があるかを確認。

• クラスタ故障が発生すると、バイパスダイオードが作動している部分が他よりも高温になることが多い。


(3) 開放電圧・インピーダンス測定

• ストリング単位やパネル単体で開放電圧(Voc)やインピーダンス(抵抗値)の測定し、異常な数値かを確認。

• 3クラスタ構成のパネル(60セル)で1クラスタ(20セル)が故障すると、開放電圧は約1/3低下する。

• Rsが異常に高い場合、クラスタ故障(はんだ不良やセル断線)の可能性がある。



5. クラスタ故障パネルの対策・修理方法


(1) 故障パネルの交換

• クラスタ故障が発生したパネルは、基本的に交換が推奨される。

• メーカー保証の範囲内であればパネル本体の無償交換できるケースもあるため、保証期間を確認することが重要。(交換工事は別途発生します)


(2) 予防策としての定期点検

• 年1~2回の点検を実施し、IVカーブ測定やサーモグラフィー診断で異常の早期発見を行う。

• 特に商用発電所では、長期的な発電ロスを最小限に抑えるため、定期点検は必須。


(3) 高品質パネルの選定

• 安価なパネルでは、はんだ接続不良やPID劣化のリスクが高まるため、信頼性の高いメーカーの製品を選択することが望ましい。


6. まとめ


クラスタ故障は、太陽光発電システムの発電量低下を引き起こす要因の一つであり、特に大規模発電施設では経済的損失につながるリスクがある。

そのため、以下のポイントを押さえて適切な対応を行うことが重要である。


定期点検を実施し、異常の早期発見を心がける

発電量モニタリングやIVカーブ測定を活用する

長期耐久性の高いパネルを選定し、故障リスクを最小限に抑える


適切なメンテナンスと監視体制を整えることで、クラスタ故障による発電ロスを最小限に抑えることができます。


クラスタ故障にパネルついて不安がある方は、お気軽にお問い合わせください!最適な点検・メンテナンス方法をご提案いたします。

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